はじめに:「え、1粒でも波の模様?」
「二重スリット実験って、なんか不思議って聞くけど…」
そんな風に思っているあなた。正解です。
だって、たった1粒の光(光子)でも、
なぜか“波の模様(干渉縞)”が現れるんですから。

博士、光の粒を1個ずつポンポン投げたのに、
どうして波みたいな模様ができるんですか?
幽霊でも投げてるんですか?

いやいや、幽霊じゃないぞ。
これが量子の不思議であり、二重スリット実験の面白さなのじゃ
この記事では、
「二重スリット実験とは何か」を
初心者でもわかりやすく解説します。
しかも、光だけじゃなくて、
電子やフラーレン(でっかい分子)でも同じ現象が起こるんです。
さらに、
「どちらのスリットを通ったか」を観測すると、
なぜか模様が消えてしまう。
これって不思議すぎませんか?
- 二重スリット実験って結局何がすごいの?
- 粒なの?波なの?量子ってどっち?
- 観測すると結果が変わるって本当?
- 簡単な解釈と、博士の小ネタつき!
結論を先に言うと、
「量子の正体は“決まっていない何か”」なんです。
(そう聞いてもピンとこないですよね…でも安心してください。
これからゆっくり解説します。)
モソッティと一緒に、
量子の不思議に足を踏み入れてみましょう!
結論:量子は「粒でもあり、波でもある。でも本当は決まっていない」

まず結論からいきましょう。
「量子(光子や電子など)は、“粒”でもあり、“波”でもある」
…のですが、それよりも正確に言えば、
「観測するまで、どうなっているかは決まっていない」んです。

えっ、決まってないってどういうことですか!?
光子とか電子って、普通に粒じゃないの?

フフ、そこが量子の妙味じゃよ。
量子というものはな、観測するまでは「粒でも波でもある状態」、
いや、むしろ「どちらとも決まっておらん状態」と言ったほうが正しい。
そして観測の瞬間に、「粒」としての姿が確定するのじゃ。
この「決まっていない」というのが、
私たちの直感とは大きくズレているところ。
でも実際に実験すると、
量子は波のように振る舞いながら、観測した途端に粒の姿になるんです。
それをバッチリ見せてくれるのが、この後紹介する二重スリット実験。
この記事では、「なぜそうなるのか?」をわかりやすく解説していきますが、
まずはこう覚えておいてください。
- 量子は、観測するまで「確率の波」みたいな存在。
- 観測すると「粒」になる。
- だから、決まっているわけではなく、「決めている」のは観測。
この感覚を持ったまま、次の章で「二重スリット実験」の不思議を体験してみましょう。
二重スリット実験とは?どんな実験?

さて、いよいよ「量子の不思議」の代名詞、
二重スリット実験の登場です。
まずはシンプルに、どんな実験なのかを見てみましょう。
基本の流れはこんな感じ
- 粒子(光子や電子など)を1個ずつ発射する
- 途中に「2つのスリット(細い隙間)」を設置
- その先に「スクリーン(感光板)」を置くと粒子の着地点がわかる
このとき、粒子がスクリーンにどんな模様を描くか?
それを観察する実験です。
粒子をたくさん撃つと…
例えば、光子(光の粒)や電子をたくさん連続で撃ち込むと、
スクリーン上に「干渉縞」と呼ばれるシマシマ模様が現れます。
この縞は、「粒が飛んできたらここに当たる確率が高いよ」という分布を示していて、
なんだか「波が干渉したときの模様」にそっくり。

ん?粒なのに波のような模様になるってどういうこと…?

ふふふ…その疑問は良い着眼点じゃな。だがそれは、まだ早い。
さらに衝撃の結果
もっとびっくりするのは、
粒子を1粒ずつ「ポン、ポン」と撃っても、
最終的にはやっぱり干渉縞ができるということ。

1粒ずつなのに、なんで?他の粒とぶつかったわけじゃないのに?
普通そう思いますよね。
でも量子の世界ではそうなるんです。
他の粒子でも同じ現象が
しかもこの現象、光子だけじゃありません。
- 電子
- 原子
- さらにはフラーレン分子(炭素60個のデカい分子)
こういった「いかにも粒子!」なモノでも、同じように干渉縞が現れるんです。

え、そんなデカい粒でも波っぽくなるの?どゆこと?

「ふむ。実はのう……その“1粒でも縞ができる”理由こそ、
古典物理では説明できん量子の不思議なのじゃ。
次は、そのナゾに迫ってみようかの!」
というわけで、
次の章では「なぜ1粒ずつでも干渉縞ができるのか?」
このナゾに迫っていきましょう。
なぜ1粒ずつでも干渉縞ができるのか?

「1粒ずつポン、ポンって飛ばしても縞ができるって、どういうこと?」
そう思ったあなた、正解です。
古典的な感覚だと、全く理解できない現象です。
だって普通に考えたら、
1粒の光子や電子が「スリットAを通ったかBを通ったか」の
どちらかでしょ?って話になります。
それが、なぜか1粒ずつでも、時間が経てば干渉縞が浮かび上がってくる。
これを説明してくれるのが、量子力学の「波動関数」です。
波のように広がる「波動関数」
量子力学では、粒子は「波動関数」と呼ばれる数式で表されます。
これが粒子の存在する“確率の波”のようなもの。
光子や電子をスリットに向かって飛ばすと、
この波動関数がスリットAとBの両方に広がってしまうんです。
その結果、
「AもBも同時に通ったような状態」になり、
自分自身と干渉して、干渉縞が現れるわけです。

「波動関数が“あっちもこっちも”に広がるから、
“1粒だけ”でも干渉が起きるんじゃよ。
不思議じゃが、数学的にはそうなっておる。」
粒子は“可能性の波”だった?
ここで面白いのが、
実際にスクリーンに当たった瞬間だけ「1点」に決まるということ。
飛んでいる間は「こっちにも、あっちにもいる」状態。
でも、観測した途端、波は「粒」に収縮して1つの点になる。
だから
「粒なのに波としても振る舞う」という
奇妙な存在になるわけです。
- 量子(光子や電子)は「波動関数」という確率の波で広がる
- スリットを通る時、両方を同時に通る
- 自分自身の波が干渉して干渉縞ができる
- スクリーンに当たると「粒」として1点に収まる

つまりのう。粒子は“ここを通る”と決まっているわけではなく、 “あっちもこっちも、両方通っているようなもの”なのじゃ。
それが波動関数の正体じゃな。

えぇぇ……
でも、じゃあもし“どっちを通ったか”を見たらどうなるんですか?

おっ、良い質問じゃ。
(まるでこの先の展開を知っているみたいじゃの。)
それは次に詳しく教えてやろう!
観測するとどうなる?干渉縞が消える理由

では、もし「どっちのスリットを通ったのか」を観測したらどうなるでしょうか?
答えはシンプル。
干渉縞は消えます。
観測した瞬間、粒子は
「スリットAを通った」
あるいは
「スリットBを通った」
と確定してしまい、
波としてのふるまいは消えてしまうのです。
これは、波動関数の収縮と呼ばれる現象。
粒子は波として広がり、2つのスリット両方を通るような状態(重ね合わせ)になっています。
でも、観測した瞬間に「どちらか」に決まってしまう。
そのため、2つの経路が干渉しあう余地がなくなり、結果としてスクリーン上には干渉縞は現れません。

でも、やっぱり不思議ですよね。観測したら粒のように、観測しなければ波のように。なんか都合よく変わりすぎじゃないですか?

うむ。その疑問はもっともじゃ。実は、科学者の間でもこの『観測で振る舞いが変わる』ことをどう捉えるか、いまだに結論は出ておらんのだ。

え、そうなんですか?じゃあ、結局…量子って何なんですか?

フフ、それが次のお話。量子とは一体何者なのか、そして科学者たちはどう解釈しようとしているのか——そこに迫っていこうではないか。
じゃあ量子って結局何なの?

ここまで二重スリット実験を通じて、量子が「波」と「粒」の顔を持ち、さらに「観測」で振る舞いが変わる、という不思議な性質を見てきました。
では、結局「量子」って何なのでしょうか?
実は、これこそが量子力学の最大の謎のひとつ。
科学者たちは長年、いろいろな「解釈」を試みてきましたが、決定的な答えはまだありません。
コペンハーゲン解釈:観測したら決まる
量子力学の最も伝統的な解釈がコペンハーゲン解釈です。
これは「量子は観測するまで、どの状態か決まっていない。観測した瞬間に決まる。」というもの。
波として存在していたものが、観測によって粒としての一つの結果に収束(波動関数の収縮)する、という考え方です。
教科書的ではありますが、「観測って何?」「なぜ観測で決まるのか?」という点は説明できていません。
多世界解釈:全部実現してる
次に有名なのが多世界解釈。
これは「観測のたびに世界が分岐し、すべての結果が並行世界で実現している」という大胆な仮説です。
つまり、「観測前は確率の重なりだった」というより、「すべてのパターンが別の世界で同時に存在している」という話。
SFのようですが、数学的には矛盾がないため、近年注目されています。
その他の解釈
他にも
- パイロット波理論:粒子は常に位置があり、目に見えない波が動きを導いている
- 確率解釈:波動関数は確率を予測するための道具に過ぎない
- 意識関与説:観測者の意識が波動関数の収縮に関わっている
など、多様な解釈が提案されています。
まだ答えはない、だからこそ面白い
これだけたくさんの解釈があるのに、未だに「これが真実だ!」という結論は出ていません。
けれど、だからこそ量子の世界は面白いのです。

つまり、“決まってない”ことが決まってるって感じですね。

そうじゃな。まるで“世界がまだ書きかけの小説”のようなものじゃ。
物語の結末は、我々の手で決めていく…そんな気がせんか?

か、かっこいい…!世界の伏線、回収したいです!
量子力学は、現実の裏側を覗き見るための最前線。
もしかしたら今この記事を読んでいるあなたが、将来この謎を解くかもしれません。
おわりに:「量子の世界は不思議で面白い」
二重スリット実験から始まった、量子の世界。
粒でもあり、波でもある。観測すれば振る舞いが変わる。
世界が分岐するかもしれない…なんて話まで飛び出す。
──いや、もう、不思議のオンパレード。
でもこれって、「物理」の話なんですよね。
SFやファンタジーじゃなく、現実に存在する自然のルール。

博士、結局ぼくたちは量子の世界の“何%”くらい理解できてるんですかね?

ふむ…。まだせいぜい“チュートリアルが終わった程度”かもしれんのう。

じゃあ本編はこれからってことですね!
そのとおり。
量子力学はまだまだ“未完成の冒険譚”。
でもその不思議さが、
新しいテクノロジーや未来の発見につながっていくんです。
量子コンピュータ、量子通信、量子センサー…。
わたしたちが使う未来の道具は、この不思議な世界から生まれています。
この記事を読んで、
「量子の世界って、やっぱ面白いな」
そう思ってもらえたなら、モソッティも博士も大満足です。
また、次の不思議でお会いしましょう。
それでは、量子の波に乗って、またね!
コメント